高齢者を雇用して助成金を受け取る8つのステップ
60歳を過ぎても元気で仕事をされている方が増えました。
60代以上のシニア世代の方々は、高齢者と呼ぶには申し訳ないような
ハツラツとした方が多いですね。
長年勤めた会社を定年退職して、新たなお仕事の場を求めて再就職活動をされているシニアの方々もたくさんいらっしゃいます。
技術や経験を豊富に持ったシニア世代を採用したいという会社は案外多いのではないでしょうか。
そんなシニア世代を新規雇用すると、国からの助成金がもらえるケースがあるってご存知ですか?
もらえるのは「特定求職者雇用開発助成金」
この助成金は就職することが難しいとされる方々を、継続的に雇用する前提で新規雇用した場合に、会社に対して国がお金を出しましょうという助成金です。
就職が難しい方々というのは、具体的に言うと障害者やシングルマザー、60歳以上の高齢者などが対象です。
例えば、中小企業がハローワークからの紹介で60歳の方を新規雇用したとします。
雇用条件は、フルタイムでもパートなどの短時間でも構いません。
6ヶ月間フルタイムで仕事を続けてもらった場合、国からの助成金として30万円を会社が受け取れます。
さらに6ヶ月仕事を続けてもらえば、30万円がさらに会社に支給されますので、1年間で合計60万円が支給されます。
この助成金は、高齢者の新規採用で受けられる助成金ですので、すでに雇っている社員の方が60歳になったからと言ってもらえるわけではありませんので注意してくださいね。
次は、助成金を受け取るための具体的なステップをご説明します。
ステップ1 ハローワークに求人を出す
まず、ハローワークで求人票をつくってもらいましょう。
会社の管轄のハローワークに「求人コーナー」がありますので、
その窓口で「求人を出したい」と伝えてください。
申込用紙をもらえますので、必要事項を記入しましょう。
(わからない箇所は、ハローワークで書き方を教えてもらえますよ。)
特に高齢者にターゲットを搾って募集をかけたい場合は、
窓口の係の方に
「高齢者の助成金を活用したいので、60歳以上の人にターゲットを絞りたい」
と伝えてください。
求人票には、原則として『◯◯歳未満』とか『◯◯歳以上」といった年齢制限を記入することはできません。
が、高齢者の助成金を活用する場合などは、例外として『60歳以上』などといった記載が認められます。
ステップ2 ハローワークから紹介してもらった人を面接する
「この会社に応募したい」という面接希望の方が出てきますと、ハローワークから会社に連絡があります。
ハローワークの方を通じて面接の日程を決めましょう。
ハローワークから連絡があった際に、「特定求職者雇用開発助成金」の対象者ですか?と一応聞いてみるのがベターかと思います。60歳以上の方であれば、全員助成金の対象者かというと、対象者ではないケースもあります。
例えばですが、
今、別の仕事をしていて、転職活動として面接をしている方は助成金の対象にはなりません。
なぜなら、この助成金の趣旨が「就職が難しい方の支援」ですので、今、別の仕事をしている方は、就職が難しい方であるとは言えないからです。
教えてくれないかもしれませんが、ハローワークにとりあえず聞いてみるほうがいいかなと思います。
会社側が就職希望の方を面接して、希望する人材であれば採用です。
面接の際には、本人にも現在無職であるかどうかは確認しておきましょう。
ステップ3 ハローワークに採用することを連絡する
採用が決まったら、ハローワークに採用することを連絡しましょう。
連絡の方法は、就職希望の方が持っている「ハローワークからの紹介状」を預かり、
裏面の「採用結果通知書」に必要事項を記載して、ハローワークにFAXします。
紹介状に記載されているハローワークに電話をかけて、結果を伝えても構いません。
ステップ4 入社後、雇用保険の取得手続きをする
助成金は、基本的には雇用保険からお金が出るので雇用保険の資格取得をした人を対象にお金がもらえます。
ですので、雇用保険の資格取得手続きは忘れないように行いましょう。
雇用保険の手続きをしていないと、助成金の対象者とは扱われませんので注意してください。
ステップ5 ハローワークから申請用紙が届く
この助成金は少し特殊で、ここまでの条件をクリアした対象者を雇用した会社に対して、ハローワークが申請書類を送付してくれるケースが多いです。
(通常、他の助成金は自分で申込用紙をもらってきて記入するのが一般的ですが、
特定求職者雇用開発助成金は、ハローワークが書類一式送ってくれる場合が多いようです。)
ただし、地域によっては取扱が違うケースもありますので、雇用保険の手続きをして、
しばらく経っても申請用紙が会社に届かない場合は、ハローワークに問合せをしてみるのがよいでしょう。
2回に分けて申請しますので、2回分の申請書類が同封されています。
ステップ6 入社6ヶ月経ったら、1回目の申請
入社後6ヶ月経ったら、会社に届いた申請書に必要事項を記入して助成金の申請をしましょう。
申請書に添付する主な添付書類は、
- 免許証のコピーなど本人確認書類
- 登記簿などの会社の確認書類
- タイムカード・出勤簿など労働日・労働時間が確認できる書類のコピー
- 賃金台帳のコピー
です。他にも必要書類がある場合がありますので、申請書に同封されているチェックリストを必ず確認してください。
ステップ7 ハローワークに申請書を提出
記入した申請書類と添付書類をハローワークに提出します。
(ハローワークに助成金受付コーナーがありますので、そちらに提出してください。助成金デスクや助成金センターがある地域は、そちらでも受付してもらえます。)
提出時期は、入社後6ヶ月~8ヶ月までの間です。この期限を過ぎてしまうと
助成金は受けられませんので、必ず期限を守りましょう。
ステップ8 2回目の申請書類提出
1回目の申請から約半年後、入社日から1年経過後に2回目の申請ができます。
申請書類は、1回目の申請書類とほぼおなじですが、本人確認書類や登記簿などは不要になるケースがあります。
申請期間は、入社後1年~1年2ヶ月の期間です。
こちらも提出期限に間に合わなければ助成金をもらえませんので気をつけてください。
いかがでしたでしょう?
対象者を雇用すればあとは期限通りに申請するだけですので、比較的受けやすい助成金だと思います。
シニア世代を新規採用すると、
これまで仕事で身につけてきた技術や経験を活かしてお仕事をしてもらえるとともに、
助成金の補助も受けられるという大きなメリットがあります。
ぜひ、シニア世代の採用にチャレンジしてくださいね。
【手続き】週30時間以上働く従業員を採用したらまず一番にやるべきこと
私、珍しく風邪をひいてしまいました。
日曜日で病院も開いておらず、常備薬の葛根湯を飲んで休んでおります。
病気やケガはいつ起こるかわかりません。
そんなときにそなえて、新しく社員を採用したらまずやってほしいことをお伝えします。
会社に年金手帳のコピーを提出してもらう
社会保険(健康保険・厚生年金保険)完備の会社に限られますが、新入社員を採用したらまず社会保険の手続きを行って、なるべく早く保険証か本人の手元に届くようにしたいですね。
そのためには社会保険の資格取得手続きが必要になりますが、その手続きには本人の氏名、生年月日等とともに年金番号も必要になります。
(健康保険と厚生年金はセットで手続きを行うケースが多いです。そのため、保険証の発行にも年金番号が必要になります。)
奥様がいれば、奥様の年金手帳も
配偶者として奥様がいらっしゃる方については、奥様の氏名、生年月日、年金番号も必要になります。
奥様がフルタイムで働いているなど、社会保険の扶養にならない場合はいりません。
子どもがいる場合は
新入社員のかたに扶養する子どもがいる場合は、氏名と生年月日、職業も確認してください。15歳未満であれば、小学生、中学生になると思いますが、15歳以上のお子様がいる場合は、職業や収入も確認して、社会保険の資格取得届に記載してください。
社員を採用したら、社会保険関係の取得手続きだけは、できるだけ早くおこないましょうね。
【建設業】「法定福利費」を明示した見積書の作り方
前回の記事で、建設業の見積書に記載する「法定福利費」とは何なのかを
解説してきました。
「法定福利費」とは、簡単にいうと、
雇用保険・健康保険・厚生年金などの「社会保険料」のことです。
「社会保険料」のうち、会社が負担している分を建設業の見積書に記載して
元請会社に請求しなさいという国の方針が示されているということを
説明しました。
今回は、「法定福利費」を明示した見積書の実際の作り方を解説していきます。
「人件費」×「法定福利費の料率」=「法定福利費」
ざっくりいうと、法定福利費は、人件費と法定福利費の料率を掛け算して計算します。
では、「人件費」と「法定福利費」のそれぞれの算出仕方を解説します。
まずは簡単な、「法定福利費」の料率から見てみましょう。
法人か個人事業かによって「法定福利費の料率」が違う
会社が払う「法定福利費」は、株式会社などの法人か個人事業かによって金額が違います。
法人の場合は会社として、協会けんぽなどの「健康保険」と「厚生年金」への加入が義務付けられています。
一方、個人事業主の場合は「健康保険」と「厚生年金」への加入は、義務ではありません。(一定の条件があれば、任意で加入することもできます。)
ですので、法人と個人事業主では見積書に記載できる法定福利費が違いますので注意してください。
具体的には、下記のようになります。
法人
雇用保険料率 ・・・0.8%(8/1,000 事業主負担分)
健康保険料率 ・・・10.06%(兵庫)÷2(会社と被保険者で折半)=5.03%
介護保険料率 ・・・1.65%(兵庫)÷2(会社と被保険者で折半)=0.825%
厚生年金料率 ・・・18.30%(兵庫)÷2(会社と被保険者で折半)=9.15%
子ども子育て拠出金・・・0.23%(全額会社負担)
合計 ・・・☆16.035%(法定福利費の率)
個人事業主(健康保険等任意加入なし)
雇用保険料率 ・・・0.8%(8/1,000 事業主負担分) のみ
合計 ・・・☆0.8%(法定福利費の率)
※個人事業主で健康保険等に任意加入している場合は、法人と同じです。
労務費(人件費)を計算する
法定福利費の算出の仕方でもっともややこしいのが人件費の算出仕方です。
人件費の算出方法には、主に3つのパターンがあります。
- 人件費を一つずつ足し算する。
- 歩掛で計算する
1.と2.の方法は労務費が正確に出しやすい反面、工数1つひとつについて、
詳細な見積もりが必要になります。
一般的な建設業では、「工事費一式◯◯円」という見積もりの仕方を採用されている会社が多いのではないでしょうか?
そういった会社さんには3.の労務費の算出の仕方であれば、取り入れやすいと思います。 - 平均的な労務費の比率を用いる方法こちらの方法が一番簡単な方法ではないかと思います。
「工事価格(総額)」×「平均的な労務費比率」=で労務費を計算する方法です。
労務費率は、「労災保険」で使う労務費率というのが、厚生労働省で決められていますので、こちらを使うのが簡単かと思います。
国土交通省からの周知文では、「労災保険の労務費率とは、必ずしも一致しない」と書かれていますが、人件費を正確に把握するのが難しい場合は労災保険で採用されている労務費率を使って計算するのが、下請会社・元請会社ともに納得感が得られやすいのではないでしょうか?
ですので、私は労務費率の算出が困難な会社さんには、この「労災保険の労務費率」をとりあえず使うことをおすすめしています。
法定福利費の計算方法
ここまで、労務費の計算のしかたと法定福利費の料率を説明してきました。
あとは、「労務費」と「法定福利費の料率(☆印)」をかければ法定福利費は計算完了です。
見本の画像を下記に貼り付けておきます。
「工事金額」+「法定福利費」を足して、最後に消費税をかけるのをわすれないでくださいね。
まとめ
労務費をどう計算するかで、悩まれる会社さんは多いのではないでしょうか?
これは私の考えですが、労務費の正確な金額を気にするよりも、とにかく「法定福利費」を元請会社に請求すること、これが一番大切なことだと思います。
建設業の社会保険未加入問題は深刻です。厚生年金は会社と従業員が半分ずつ費用を負担することで、国民年金や民間の年金よりもはるかに手厚い給付が受けられる制度になっています。しかしながら、建設業では未加入のままになっている会社が多いのです。
全ての会社が「法定福利費」を見積書に明記し、請求する。それを元請会社が支払うという当たり前といえば当たり前の仕組みが浸透していけば、建設業の社会保険の加入率も上がってくるのではないでしょうか?
そういう「当たり前」のことが浸透することによって、建設業のかたはもちろん、私たちの老後の年金財源を確保することにもつながってくるのだと思います。
【建設業】見積書に明示する必要のある「法定福利費」とは
日本の多くの建設会社さんは、発注元である「元請会社」さんから仕事を請け負う「下請会社」さんではないでしょうか。
建設業の「下請会社」のみなさんは、最近「法定福利費」という言葉をよく耳にされませんか?
元請会社へ提出する見積書に、この「法定福利費」を元請会社へ提出する見積書に記載する必要があることはご存知でしょうか。
今回は、この「法定福利費」について、解説いたします。
1.そもそも「法定福利費」って何?
「法定福利費」とは、法律で決められている社会保険料のことです。
具体的にいうと、
のことです。
「労災保険」も一応、法定福利費には含まれますが、建設業の見積書に記載する法定福利費からは除かれます。
この理由は、また後日解説します。
2.「法定福利費」を見積書に記載するってどういうこと?
上述の「雇用保険」「健康保険料(+介護保険料)」「厚生年金保険料+子ども子育て拠出金」は、会社負担分と労働者負担分があります。
このうち、「会社負担分」を建設業の見積書に明記して、材料費・人件費・管理費などの通常の見積金額とは別に、
「社会保険料」の会社負担分を
通常の見積金額に上乗せして、元請会社に請求しましょう
というのが、「法定福利費」の見積書への明示ということです。
法定福利費は、材料費・人件費・管理費等の見積もり合計金額のおよそ3%
程度にのぼりますので、ざっくりいうと3%程度受注金額がアップ
することになります。
3.なぜ、見積書に明示する必要があるの?
「法定福利費」を元請会社に請求しなさいという「国の方針」が大きく影響しています。
参照:建設産業・不動産業:社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン - 国土交通省
背景には、建設業の社会保険未加入問題があります。
多くの中小・零細建設会社で、「雇用保険」「厚生年金」等の加入義務があるにもかかわらず、未加入のままになっています。
この未加入問題を解決するために、「法定福利費」を元請会社に請求して、費用を確保し、社会保険に入りましょう、というのが、「法定福利費の見積書への明示」なのです。
4.どうやって見積書に記載するの?
ごく簡単にいうと、「労務費(人件費)」×「法定福利費の会社負担割合」を見積書に書く、ということです。
先述のとおり、3%程度見積もり金額に上乗せできる場合も多くあります。
具体的には次の記事にて、解説いたします。