明石・加古川の社会保険労務士

明石と加古川の周辺でお仕事をしている社会保険労務士です。

【建設業】「法定福利費」を明示した見積書の作り方

前回の記事で、建設業の見積書に記載する「法定福利費」とは何なのかを

解説してきました。

法定福利費」とは、簡単にいうと、

雇用保険・健康保険・厚生年金などの「社会保険料」のことです。

社会保険料」のうち、会社が負担している分を建設業の見積書に記載して

元請会社に請求しなさいという国の方針が示されているということを

説明しました。

今回は、「法定福利費」を明示した見積書の実際の作り方を解説していきます。

 

 

「人件費」×「法定福利費の料率」=「法定福利費

ざっくりいうと、法定福利費は、人件費と法定福利費の料率を掛け算して計算します。

では、「人件費」と「法定福利費」のそれぞれの算出仕方を解説します。

まずは簡単な、「法定福利費」の料率から見てみましょう。

 

法人か個人事業かによって「法定福利費の料率」が違う

会社が払う「法定福利費」は、株式会社などの法人か個人事業かによって金額が違います。

法人の場合は会社として、協会けんぽなどの「健康保険」と「厚生年金」への加入が義務付けられています。

一方、個人事業主の場合は「健康保険」と「厚生年金」への加入は、義務ではありません。(一定の条件があれば、任意で加入することもできます。)

ですので、法人と個人事業主では見積書に記載できる法定福利費が違いますので注意してください。

具体的には、下記のようになります。

法人 
雇用保険料率 ・・・0.8%(8/1,000 事業主負担分)
健康保険料率 ・・・10.06%(兵庫)÷2(会社と被保険者で折半)=5.03%
介護保険料率 ・・・1.65%(兵庫)÷2(会社と被保険者で折半)=0.825%
厚生年金料率 ・・・18.30%(兵庫)÷2(会社と被保険者で折半)=9.15%
子ども子育て拠出金・・・0.23%(全額会社負担)
合計       ・・・16.035%(法定福利費の率)

個人事業主(健康保険等任意加入なし)
雇用保険料率 ・・・0.8%(8/1,000 事業主負担分) のみ
合計     ・・・0.8%(法定福利費の率)

個人事業主で健康保険等に任意加入している場合は、法人と同じです。

 

 

労務費(人件費)を計算する

法定福利費の算出の仕方でもっともややこしいのが人件費の算出仕方です。

人件費の算出方法には、主に3つのパターンがあります。

  1. 人件費を一つずつ足し算する。

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  2. 歩掛で計算する

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    1.と2.の方法は労務費が正確に出しやすい反面、工数1つひとつについて、
    詳細な見積もりが必要になります。

    一般的な建設業では、「工事費一式◯◯円」という見積もりの仕方を採用されている会社が多いのではないでしょうか?
    そういった会社さんには3.の労務費の算出の仕方であれば、取り入れやすいと思います。

  3. 平均的な労務費の比率を用いる方法f:id:akashikakogawa:20180211171351j:plainこちらの方法が一番簡単な方法ではないかと思います。
    「工事価格(総額)」×「平均的な労務費比率」=で労務費を計算する方法です。
    労務費率は、「労災保険」で使う労務費率というのが、厚生労働省で決められていますので、こちらを使うのが簡単かと思います。

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    国土交通省からの周知文では、「労災保険労務費率とは、必ずしも一致しない」と書かれていますが、人件費を正確に把握するのが難しい場合は労災保険で採用されている労務費率を使って計算するのが、下請会社・元請会社ともに納得感が得られやすいのではないでしょうか?
    ですので、私は労務費率の算出が困難な会社さんには、この「労災保険労務費率」をとりあえず使うことをおすすめしています。

 

法定福利費の計算方法

ここまで、労務費の計算のしかたと法定福利費の料率を説明してきました。

あとは、「労務費」と「法定福利費の料率(☆印)」をかければ法定福利費は計算完了です。

見本の画像を下記に貼り付けておきます。

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「工事金額」+「法定福利費」を足して、最後に消費税をかけるのをわすれないでくださいね。

 

まとめ

労務費をどう計算するかで、悩まれる会社さんは多いのではないでしょうか?

これは私の考えですが、労務費の正確な金額を気にするよりも、とにかく「法定福利費」を元請会社に請求すること、これが一番大切なことだと思います。

建設業の社会保険未加入問題は深刻です。厚生年金は会社と従業員が半分ずつ費用を負担することで、国民年金や民間の年金よりもはるかに手厚い給付が受けられる制度になっています。しかしながら、建設業では未加入のままになっている会社が多いのです。

全ての会社が「法定福利費」を見積書に明記し、請求する。それを元請会社が支払うという当たり前といえば当たり前の仕組みが浸透していけば、建設業の社会保険の加入率も上がってくるのではないでしょうか?

そういう「当たり前」のことが浸透することによって、建設業のかたはもちろん、私たちの老後の年金財源を確保することにもつながってくるのだと思います。